【哲学・考察3】フリードリッヒ・ニーチェのルサンチマン
「神は死んだ」で有名なニーチェだが、この考察は別に譲ろうと思う。
このルサンチマンとは、「やっかみ」のことであり、イソップ童話の酸っぱいブドウの話が分かりやすい。
ある日、キツネは木の上においしそうなブドウをみつけました。
キツネはとてもおなかがすいていたし、のどもかわいていたので、よろこんでブドウをとろうとします。
ですが、ブドウはたかいところになっているので、どうやってもキツネにはとることができませんでした・・・
キツネは「あんなところにひとつだけのこっているブドウなんて、すっぱくておいしくないに違いない」と、あくたいをついて、かえってしまいました。
うる覚えですが、こんな感じ。
つまり、最初は「美味しそうだったブドウ」が、いつしか「酸っぱくて美味しくないブドウ」にすり替えられている。
これは認知的不協和の一つで、「手に入らない現実」があったときに、現実に合わせて「手に入れない理由」を都合よく作っていると考えられる。
厳密にいうと、手に入らないのは自分の能力不足が問題なのであるが、それを直視したくないがために、「あれは欲しくないやつだ」と勝手に納得させるのだ。
ニーチェによれば、ルサンチマンの反応は2種類に分かれるという。
①ルサンチマンの原因の価値観に従い、解消しようとする
②ルサンチマンの原因の価値観をすり替える
①は、例えばiPhone・ワイン・ファッションなどが言えるだろう。
毎年新作が発売された時に、新作を持っている/持っていないというルサンチマンが発生
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ルサンチマンに従い、買いたくなる。
という仕組みだ。
熱狂的なファンの中では、新作を持っている・持っていないということで圧倒的な序列が生まれる。その優越感を味わいたいがために、人々は徹夜してiPhoneを買うために徹夜して並んだりするのだ。
②は上記イソップ童話の例なので割愛するが、
ポイントは、これらのルサンチマンは人工的に・意図的に作り出されたものであるということだ。
ブランディングされたサービスは極めて利益率が高いが、高価な商品であればあるほど、ルサンチマンは強化される(持っている時の優越感が高まる)というも言えるのではないか。
つまり高単価の価格帯に設定しても、顧客に納得性が担保できるため高利益なのだ。
せっせとこれらの企業が毎年新作を発表する理由が分かっただろうか。
ローマ人に迫害されてきたユダヤ人は、ローマ人の富と権力を羨ましがり、憎んでいた。
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つまり、ローマ人に対するルサンチマンに対し「ローマ人は天国へいけない」という価値観のすり替えを行ったのだ。
こうして、キリスト教は富めないもの中心に爆発的に広がっていった。
この要素だけ見ると、現代社会でも人々の発言の至るところにルサンチマンが見て取れる。
「金持ちは醜い」
「自由がなくなるから出世したくない」
「金がかかるから恋愛したくない」
「美人にはブスが多い」
これらの発言をしている人を良く見てほしい。
実際にはその到達点に達した人だろうか?
実際の経験者が言う言葉であれば、それはルサンチマンではない。
普通に考えて、
実際に金と性格には関係はないし、むしろ教養がある方は金持ちの方が多い。
出世して自由がなくなるというのは一つの側面だが、それ以外に影響力や収入増などのメリットも多い。
恋愛は別に金かけなくてもできる。
美人も丁重に扱われることが多いから、歪んだ自意識になりづらいのでは。
とか思う。
要は、対象をディスらなくても自らの意見は表明できるのに、人々は無意識にルサンチマンに捕われているのだ。心の底で羨望している対象をディスってしまうのが人の性だ。
ルサンチマンは、非常に共感を生み拡散しやすいツールである。(例えば、憧れの対象になりやすい芸能人のスキャンダルを見ると分かりやすい)
要は使いみちであるが、プロモーションに携わる人間は覚えておいて損は無い考え方だろう。
と、同時にルサンチマンに捕われている人の意見は、耳半分で流しておくのが吉だ。
ニーチェさん、ありがとう。合掌