【哲学・考察5】フェルディナンド・テンニースのゲマインシャフトとゲゼルシャフト
社会構造を長期で見ると、同じサイクルを繰り返しながら弁証法で発展していっていることが分かる。
例えば、共産主義⇔資本主義や詰め込み方教育⇔フリースクールなど。
当然どちらもメリット・デメリットがあるから、片方のデメリットに人々が飽和してくれば、もう片方への移行を促す声が高まるのは当然だ。
政府や既得権益を持つプレイヤーが世論を抑え込むことが出来なくなった点でそれは転換点になる。
で、今回のゲマインシャフトとゲゼルシャフトとは、サマるとこんな感じだ。
ゲマインシャフト:地元・家族のように自然発生的に深く結びついたコミュニティ。長期的にコミュニティのメンバーを守ることが前提。
ゲゼルシャフト:会社のように利益・機能ベースで深く結びついたコミュニティ。機能が失われた人員がコミュニティーから去るのはいとわない。
このテンニース氏は、1800年後半~1900年前半まで、労働組合と協同組合に参画・フィンランドやアイルランドの独立運動を提唱する等、ゲゼルシャフト寄りの会社組織にゲマインシャフトの要素を持たせた。
(高度経済成長時の日本的経営の要素「終身雇用」「年功序列」「組合」のうち一つの要素を導入した)
日本の話をすると、長らくゲマインシャフトが担保されていた時代だった。
戦前 :生まれに起因する仕事を世襲し、生まれ育ったコミュニティの人々と深く関わりながら生きる
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高度経済成長:稼ぎに象徴されるように、生まれ育ったコミュニティから出て一つの企業で勤め上げる人々が急増。
これは本質的には、終身雇用・年功序列・組合が整った会社が社員の面倒を一生見るという点で、ゲマインシャフトの主体が地域から会社に移転したことを意味する
そして今、終身雇用は破綻しているため、ゲマインシャフトの機能が企業から無くなっている。
その中で流行りになっているのが、シェアハウス・サロンなどの人的ネットワーク形成や、田舎暮らしといったローカルコミュニティへの回帰だ。
思うに、人は誰しも複数のコミュニティで生きている訳で、ゲマインシャフトという帰れる場所が前提にあるからこそ、ゲゼルシャフトにて出稼ぎに出ることが出来る。
本来的に人は帰巣本能があるから、帰る実家や地元と呼べる場所がある人はそこを大切にしないといけないし、転勤族の人は第二の地元のようなコミュニティを作っていく動きをする必要がある。
最終的に人としての幸福感に直結するのは、人としての長い繋がりである。
多様な働き方があるのは良いが、その働き方にあった人それぞれのゲマインシャフトを見つけたい。
テンニースさん、ありがとう。合掌