バブルと共にはじけた家。
生まれ育った土地に戻ると懐かしい思い出がある。
それは、小学校の通学路に未だ残る駄菓子屋であったり、ボール遊びをしていて怒られたおじいちゃんの家だったりする。
だが形が残っているものは少数で、他は少しづつ形を変えてそこに存在している。
漬物屋は5階建てのマンションに変わった。
家の近くの豪邸は、家主が無くなり、更地になっていた。
ご馳走だった食べ放題の焼き肉屋はコンビニに変わっていた。
そして小学校の旧友の家は、売りに出され他の人が住んでいる。
その旧友の家は30年ほど前には珍しく、デザイナーズ風のコンクリ建ての1軒屋であった。
しかも僕たちが住んでいた家は、すぐ後ろが田んぼというような田園風景であったから、当初彼の家はものすごく珍しい家であった。ハイカラである。
彼とは幼稚園から高校まで同じ学校・同じ年であったこともあり、小学校まで何回もその家に泊まりにいったし、自分の家に彼が泊まりに来ることもよくあった。
その時は、とりあえずお互い暇だから、お互いの家にピンポンで行くっていう感じ。
我々の一番の流行りは遊戯王カードであり、資金力がない僕は、あの手この手で交渉をして彼からいらないカードをもらっていた。
そして中学高校からは部活も違うようになりコミュニティも変わったので、そこまで遊ぶことも無くなった。
どちらかと言うと彼は優しいタイプの人間で、中学高校の尖った感じの校風についていくのが必死だった僕は、意図的に彼を避けていた気がする。
「あいつとお前友達なん?」みたいなやつを気にしていた。中高生の自意識なんて本当しょうもないと思う。
高校の時に、数年ぶりに小学校のメンバーで彼の家に泊まりに行ったのが最後の思い出だ。
その時は、10年ほどの時が戻り懐かしい気持ちになれたのを覚えている。
そして数十年経ち、彼とは連絡が取れない。
彼はSNSもやってないらしく、ど派手なデザイナーズ風の建物はリフォームされている。
毎回帰省すると、仲間うちで「あいつは何してるんだろう」という話になる。
もう他人と何かを比較するような年齢でもないし、純粋にあの時の思い出話をしたいだけなのだが、どうやら仲間うちでも連絡が取れない状態らしい。
なんだかんだ、やることは特にないけど、地元はいいもんだ。
あいつがいきなりピンポン押して訪ねてきた時にまだ我が家の表札が残っているように、実家は残しておきたく思う。