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セラノス倒産。詐欺とビジョンの狭間で。

先日、ついにこのニュースが出た。

https://www.technologyreview.jp/nl/theranos-is-shutting-down/

 

2014年までスティーブ・ジョブズの再来としてアメリカのVCの注目を集め、ユニコーン企業(未上場で時価総額1000億円以上)であったセラノスがようやく解散するようだ。

 

一時は9000億円(ちなみに東電は9000億を少し下回る)ほどの時価総額だったこちらの企業のコア技術としては、

「指先から採取したわずか1滴の血液を使い、コレステロールから遺伝子検査まで数百もの検査を可能にする」というものだった。

 

これは、現在の技術では可能な企業はなく、投資家達はこぞってこの彗星のように現れた企業に投資をした。

「どうやってこの技術を可能にするのか?」

全ての投資家の興味であったが、著名な投資家達が投資しているという事実は、この実態無き企業の評判を担保した。

この技術のノウハウは誰も知らず秘密とされていたが、結局この技術は存在しなかった訳で、誰も知らなくて当たり前だった。

 

★★

アメリカのスタートアップ界隈は日本とは資金調達の桁が2つほど異なり、派手なピッチを行い、資金やリソースを集める傾向が強い。

スタートアップは大手企業が本格参入し辛いニッチな分野に特化、または大手が参入しづらい法律のグレーゾーンを攻めることで、イノベーションを可能とする。

 

ただ、スタートアップは金が尽きる前にスピード感を持って商品開発をしないといけないが、一方で当初は金が無いというジレンマとの戦いだ。

そのため、どうしても「ストレッチしたビジョンを掲げて、注目や人・モノ・カネのリソースを集め、納期までにサービスを作りだす」という走りながら作るというスタンスを取らざるを得ない。

(例外は、オーナー等の別の事業から生まれるキャッシュが潤沢にある企業だ。この場合は、腰を据えて商品開発をすることが出来る)

 

ここは一歩間違えば詐欺になりかねないいうギリギリのラインである。

ただ単にホワイトペーパーのみなのか、実際に商品開発が進んでいるのか、そこを見極めるのが投資家の重要な仕事だ。

 

★★

一方で企業側には、「どこまで話を盛って、どこまで盛りすぎないか」のギリギリのラインを見極めることが求められる。

あまりに浮世離れしたビジョンはオオカミ少年であるし、一方で他の企業では達成不可能そうなビジョン、目標を掲げないと必要なリソースを確保するのが難しい。

 

こちらの絶妙なパワーバランスでエコシステムが回っているのであるが、会社側が歯止めが効かなくなり投資家にホラを吹き続けた結果、ゴミみたいなプロダクトと壮大なプレゼン資料のみだけが残ったケースは大挙に暇がない。(ウェアラブルバイス系とか、AR系とか、検索したらいっぱいある)

 

ただ、これらの屍を超えていかないと技術革新は難しく、そこを投資側は寛大に捉えること、また企業側には一定の倫理観が必要だ。

 

そしてこの一連の茶番劇に踊らされた投資家達は最終的に1000億以上の損失を被るそうである。

 

さすがチャレンジの国アメリカ。スケールがでかすぎる。

良くも悪くもこのくらいアグレッシブな土壌がある限り、日本から世界で戦える企業が出てくるのは絶望的な気持ちになる。